展示施設 : ミュージアムエリア ROKKO森の音ミュージアム、新池
木々に囲まれた少女の彫刻、奈良美智(ならよしとも)作の「Peace Head(拡大作)」です。おぼろげな目をした大きな少女の顔は何を見ているのでしょうか。作品名の由来は彫刻の後ろ側に点で刻まれたPEACEの文字とマークです。 作者は可憐さとともに、こちらの心の中を見透かしているかのような鋭い表情を漂わせる少女をモチーフにした作品で知られる日本を代表する美術家です。こどもの姿を借りて社会の不公正や対立に対して鋭いメッセージを投げかけている作品群は世界の様々な立場の人々から高い支持を受けています。 本作品の原型は作者の手の中で造形された手跡の残る粘土です。拡大されまるで巨人が手作業で作り上げたかのような本作品は私たちの小ささを確認する鏡のようにも感じます。タイトルのPeace(平和)は争いや対立の無い状態を示すだけではなく平穏な状態、心の安寧の意味をもっています。自然災害が多い日本で多くの表現者はそのことと向き合ってきました。東北の未曾有の災害ののちに奈良はこのシリーズの発表を始めています。かつて神戸で起きた震災から30年が過ぎた2025年に本作品は六甲山に展示されました。 世界中で絶えない災害や対立に対して私たちはどのように向き合うことが出来るのか。六甲山の自然のなかで静かに深く考えてみたいと思います。 【奈良美智 コメント】 この作品は六甲の森でどんな顔をしているのだろう。訪れるみなさんと共に一緒に溶け込んで森の中でずっと微笑んでいてほしいです。